オルガナイザーあいさつ 日原公大|那須野が原国際彫刻シンポジウム

オルガナイザー 日原公大


 人間は自分に必要な道具を生み出し、工夫して今日の文化を作り上げてきました。人間の感性は実体験を通して形成されるので、心豊かに生きるために必要な物を作り出すという作業は、幼少期の教育において最も大切であると考えられています。芸術的感性は創造力のある人間を生み出します。どんなに便利で快適な生活ができても、不安定な冷たい社会では人間は正しく生きることは大変難しいと思います。人間の感性を活性化させ、維持するに適した芸術環境を身近に整備することが今最も大切であると思います。

  大田原市は関東平野の北部、那須野が原の中央に位置し、那須連山を眼前に仰ぐ風光明媚な土地であるとともに、湧き出ずる豊富な清流に恵まれた広大な水田地帯を擁し、古くから奥州街道の宿場として発展してきました。屋島の合戦で見事に扇の的を射抜いた、那須与一が生まれ育ったところとしても知られています。

 このような土壌をもつ本市は、1989年のふるさと創生事業を契機として、「緑と水と芸術のあるまちづくり」をテーマに、現在まで市民と芸術的なふれあいを目的とした数々の事業を行ってきました。特に、市民の自主的な計画と努力によって運営されている「大田原市街かど美術館」は今年で20回目を迎え、1996年には、栃木県経済同友会主催の美しい街づくり奨励賞にも輝きました。また、1994年には1,300人を収容できる大ホールをはじめ、小ホール、ギャラリー等をもつ芸術鑑賞と音楽教育の性格を兼ね備えた「那須野が原ハーモニーホール」が開館し、1995年には宿泊研修施設を備えた「大田原市ふれあいの丘」の開設や「国際医療福祉大学」が開学したことにより、若者が増え活気がみなぎり、輝いている街になりつつあります。シンポジウムを催す背景にはこのような市民の力強いパワーと、行政との地道な連携がありました。

  彫刻家が各自のアトリエを離れ、シンポジウム会場で公開制作することは、作品に何らかの良い影響や変化が生じるに違いありません。さらに、子どもたちや市民が公開制作に接することで、楽しい空間、美しいものや創造の瞬間を共有する喜びを味わうことができるでしょう。

 私たち実行委員会は「大田原市ふれあいの丘」という素晴らしい環境の中で良い人間関係が生まれ、それが今後の新しいまちづくり、人づくりにつながるものと確信し、このシンポジウムを企画したところです。